富山の家の空気

富山の家の空気
富山の家の空気

富山の家の空気

私たちは、一日の多くの時間を家で過ごします。約1kgの食事を摂り、約2リットル=2kgの水を飲みます。そして、約12kgの空気を吸っています。どこの家庭でも、食べる物には十分気を付ける習慣があります。水も、ミネラルウォーターを飲む習慣が、定着し始めています。しかし、一番摂取量の多い空気に、注意を払う人はほとんどいません。

高度成長期に、工期を短縮し、低コストで大量生産された新建材を用いて、多くの住宅が建設されました。また、住宅の快適性と省エネルギー性を高めるため、高気密・高断熱を進めてきました。その結果、室内に使われた新建材から、化学物質が揮発し、気密性の高い室内に化学物質が浮遊し、室内の空気汚染が問題となっています。コロナ禍で、空気質が問われ始めています。地球の二酸化炭素濃度は、有史以来ほぼ一定に保たれていましたが、世界の工業化が始まってから、たった270年間で48%も増加しています。

いまここで、室内の空気について、考えることが大切だと考えます。

一日に摂取する空気の重さ

人間は、成人安静時で、1分間に約15~16回呼吸します。1回の呼吸量が約0.5リットルなので、1日分の呼吸量は、15回×60(分)×24(時間)×0.5リットル=10,800リットルです。1リットルの空気は約1.1gの重さがありますので、人間が呼吸する1日分の空気の重さは、10,800リットル×1.1g=11,880g≒12kgとなります。

NHK中学・空気の重さの測定 >>
茨木市立北陵中学校授業記録 >>



富山の家の空気の特徴

特徴その① シックハウスの原因となる建材をできる限り排除する

住居内等での室内空気汚染が原因となり、様々な健康障害が問題となりました。この病気のことは、シックハウス症候群と呼ばれています。最も大きな原因は、化学物質を放散する新建材や内装材などの使用による室内空気汚染です。様々な化学物質で汚染された室内空気環境により、居住者に頭痛や吐き気、目の痛み、めまい、平衡感覚の失調、呼吸不全、疲労などの様々健康障害を引き起こします。

特徴その② 自然素材を使う

木ぐみ舎の家造りは、可能な限り自然素材を使います。建物の構造体となる柱や梁には、無垢の杉や桧、松などを使います。集成材は使いません。集成材は、細かく切断された木材を接着して生成され、接着材には、化学物質が含まれているためです。床材は、無垢の木材を使います。壁は、漆喰や土や和紙で仕上げます。天井も和紙などの自然素材を使います。

特徴その③ カビの発生を防ぐ

カビの発生も健康被害の要因となります。 カビが生えると見た目が悪いだけでなく、人体にも悪影響を及ぼします。アレルギーや喘息(ぜんそく)などの原因となります。梅雨時や冬になると、咳が数か月続いたりします。カビは、放っておくとあっという間に繁殖が広がっていきます。

特徴その④ 二酸化炭素濃度を常に外気と同じレベルに保つ

呼吸する壁と呼吸する屋根を採用することで、室内の二酸化炭素を常に外部に排出し、常に外気の酸素を室内に取り入れることができます。

家全体の空気の循環を考える

家の空気って、どれぐらい循環するのか? 一種換気扇を付ければそれでいいのか? 高気密高断熱をやりだした頃は疑問だらけでした。ただ、実体感では空気は循環していないと思いました。
空気が循環すると、食事の臭い、トイレの臭いなど、家じゅうにまわるのではないかと、お客様からの質問も当時多くありました。高気密高断熱の家に暮らしてみて解かったのは、食事の臭いは一瞬家中にまわりますが、家中の空気で薄められますので逆にすぐに消えてしまいます。トイレ臭いは薄められて全く気になりません。

この薄められるというのがみそです。汚い空気ときれいな空気が循環により混ざり合い、気になる物質や水蒸気が薄められます。したがって、家の空気は循環させたほうが人にとっては快適に感じ、家も長持ちします。

ジュープラスオリジナルの全館空調「エアーD」の開発に2年以上かかったのも、空気が意外に循環しない、部屋と部屋の温度差が解消しないと言った理由でした。全館空調をやる前は、リビングなどに高性能なエアコンを設置し、一種換気扇で家中にまわすという事をやっていましたが、夏の寝室が暑いというクレームがしばしば。つまり一種換気扇では十分に循環しないという事がわかってきました。現在は、経験から学び、一種換気扇と全館空調をうまく組み合わせたオリジナルな方法を取っています。

 

室内の二酸化炭素濃度について

お客様から全くと言っていいほど質問が出てこないのが、室内の二酸化炭素についての質問です。僕もエコハウス研究会の丸谷博男先生と出会い、教えて頂くまでは軽視していました。お客様から質問が出ないのは、その対策をしている住対宅会社が全国的に少ないのでネットで見つけづらい。富山県の住宅会社も全く対処していないからだと思います。

二酸化炭素の濃度は、国の基準で居室は1,000PPM以下にしなければいけません。濃度系で計測してみると、1,000PPMはあっという間に超えてしまいます。人は二酸化炭素を吸い込むと、眠くなったり、頭痛がしたり。。。 家の中で二酸化炭素の濃度が一番高いのは寝室です。二酸化炭素の濃度が一番高い寝室では、眠りが浅くなったり、疲れが取れなかったりします。二酸化炭素の濃度が高いという事は、空気を吸っても酸素が薄い(少ない)ということですから、当然の結果です。

二酸化炭素の濃度を下げるには、循環と換気の他に、呼吸する壁にすることが有効です。物質は濃度の高い所と薄いところへ交わろうとします。酸素と二酸化炭素は透過スピードが二酸化炭素の方が早いと言う特性から、呼吸する壁にすれば二酸化炭素が外に排出され、酸素が室内に入ってきます。これが機械に頼らない本当の健康住宅です。美容にもいいです。

二酸化炭素濃度に関する基準

基準 場所 CO2濃度
建築基準法 住宅等の居室 1時間当たり0.5回の換気量≒1000ppm以下
住宅等の居室以外の居室 1時間当たり0.3回の換気量≒1500ppm以下
建築物衛生法 室内 1000ppm以下
ビル管理法 室内 1000ppm以下
労働安全衛生法 事務所 5000ppm以下
学校環境衛生基準 教室等 1500ppm以下

ppmは大気中の分子100万個中にある対象物質の個数を表す単位

カビ

カビの問題は、簡単なようで、簡単ではありません。ここに住環境の根本的な問いかけがあります。人間の健康を度外視すれば、カビ問題の解決は簡単なのですが、人間の健康と両立させるところに難しさがあります。それでは、なぜカビが生えるのでしょうか。いくつかの条件が揃うと、カビが繁殖を始めることが解かっています。

カビが生える条件①
温度

カビは、20~30℃の温度で発生します。25~28℃が、最も生育に最適な温度です。高温側では、40℃を超えると、カビは死滅します。低温側では冷蔵庫の中でも繁殖します。生活の場で温度によってカビを防ぐのことは困難です。水蒸気を発生させる暖房器具や、25~28℃のエアコンの使用は、カビの繁殖には最良の環境となります。

カビが生える条件②
空気のよどみ

空気の流れが無くなり、よどみができると、カビが発生し易い環境となります。機械式の換気では、空気の道が限られるため、空気が流れないエリアが発生します。このため、攪拌と排気の両方が必要となります。

カビが生える条件③
湿度

カビは湿度60%以上になると活動を開始し、湿度70%以上で活発に活動が始まります。湿度80%以上になると一気に繁殖が始まります。 湿度の管理をすることでカビを抑制できます。言葉を変えると「調湿力」が必要ということになります。発生する空気中の水蒸気を減衰させ、空気中の水蒸気を減らし、カビの発生条件を低減する。そのために、木質断熱材の利用と調湿気密シートの併用、さらに調湿力のある下地板と仕上材、そして透湿構造を壁全体に持たせることが、調湿力を保全させています。

カビが生える条件④
酸素と栄養分

これはカビにとって必至の条件ですが、生活空間でこれを防ぐのはほとんど不可能といえます。栄養分に関しては、掃除・清掃をまめにやるしかありません。

有効なカビ対策①
風通し

春と秋は、窓を開けることで、家の中の風通しを良くすることが容易です。風は南北に抜け易いため、窓の配置がポイントです。問題は、夏と冬です。地球温暖化により、日本は毎年猛暑となりますので、窓を開けることは難しくなります。冬は、窓を開けると寒いため、頻繁に窓を開けることが難しくなります。

有効なカビ対策②
金属イオン

新型コロナウィルス対策で注目されている「光触媒」があります。これを昼夜問わず機能させることができる「エアプロット」がウィルスやカビの胞子を水と炭酸ガスに分解して無害化する技術です。余分な発生源の抑制とともに有効な科学の力です。

有効なカビ対策②
アルミ箔

遮熱効果のために家全体をアルミ箔で覆っています。実はこのアルミ箔が、壁・屋根の構造体中に発生するカビを抑制する役割を担っています。さらに、この効果は、生活空間全体に広げることができます。料理で廃棄しているアルミ箔を丸めて、排水溝に入れておいてください。カビが抑制されます。

有害な化学物質

高度成長期に、低コスト・工期短縮により、新建材を用いて、多くの住宅が建設されました。また、住宅の快適性と省エネルギー性を高めるため、高気密・高断熱を進めてきました。その結果、室内に使われた新建材から、化学物質が揮発し、気密性の高い室内に化学物質が浮遊し、室内の空気汚染が問題となりました。厚生労働省は、快適で健康的な室内空間を確保する目的として、室内空気中化学物質の室内濃度指針値について発表しています。

室内空気中化学物質の室内濃度指針値について

揮発性有機化合物 室内濃度指針値* 毒性指標 設定日 改定日
ホルムアルデヒド 100μg/m3(0.08ppm) ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 1997.6.13
アセトアルデヒド 48μg/m3(0.03ppm) ラットの経気道暴露における鼻腔嗅覚上皮への影響 2002.1.22
トルエン 260μg/m3(0.07ppm) ヒト吸入暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 2000.6.26
キシレン 200μg/m3(0.05ppm) ヒトにおける長期間職業曝露による中枢神経系への影響 2000.6.26 2019.1.17
エチルベンゼン 3800μg/m3(0.088ppm) マウス及びラット吸入暴露における肝臓及び腎臓への影響 2000.12.15
スチレン 220μg/m3(0.05ppm) ラット吸入暴露における脳や肝臓への影響 2000.12.15
パラジクロロベンゼン 240μg/m3(0.04ppm) ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響 2000.6.26
テトラデカン 330μg/m3(0.04ppm) C8-C16混合物のラット経口暴露における肝臓への影響 2001.7.5
クロルピリホス 1μg/m3(0.07ppb)
小児の場合0.1μg/m3(0.007ppb)
母ラット経口暴露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 2000.12.15
フェノブカルブ 33μg/m3(3.8ppb) ラットの経口暴露におけるコリンエステラーゼ活性などへの影響 2002.1.22
ダイアジノン 0.29μg/m3(0.02ppb) ラット吸入暴露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 2001.7.5
フタル酸ジ-n-ブチル 17μg/m3(1.5ppb) ラットの生殖・発生毒性についての影響 2000.12.15 2019.1.17
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 100μg/m3(6.3ppb) ラットの雄生殖器系への影響 2001.7.5 2019.1.17

国立医薬品食品衛生研究所のホームページ参照
揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)
*両単位の換算は、25℃の場合による。
ppmは大気中の分子100万個中にある対象物質の個数を表す単位

空気に含まれる物質を理解し室内の呼吸を考えよう

近年、24時間換気が義務化され、建材の☆☆☆☆(フォースター)認定などで、室内環境は改善されているはずですが、千葉大学の鈴木先生の研究では、ここへきてシックハウス症候群になる人が増えているそうです。24時間換気では充分に循環していない事が判明されています。どの換気メーカも住宅会社も自社の換気扇の自慢ばかりしていますが、やはり機械に頼る建築には限界があります。昔の土壁のように壁を呼吸させないと健康で美容的な暮らしは手に入れることができません。